二度と戻れぬとわかっていても別れをゆっくりと過ごす時間はないだろう。たとえ長く病床にあったとしても、特にそのような場合だからこそいなくなった後のことを想定しての話はしないだろう。きっとその時は突然やってくる、どれだけ覚悟をしていても悲しくなくては不思議だろう、悲しむのは許してあげる、でも悔やむ事は許さない。残されたものが悔やむ姿ほど去って行く者にとって辛いものはない。
残された者たちよ、吾輩がいなくなれば、お葬式を出しておくれ。喪主は長男が責任を持ってやってくれるだろう。どんな形の葬式でも良い、知らせるべき人々に知らせておくれ。悲しむのはその日一日で充分だ、後で知ったよとまた悲しみを繰り返すのは本望じゃない。告別式で世間へと別れを告げればそれだけで充分だ。